赤ちゃんは非常にか弱い存在であり、新生児の頃は身体を自由に動かすことも、言葉で伝えることもできません。そんな赤ちゃんは生きていくためには毎日起こる出来事に本能で素早く反応しなければなりません。そのために備わっている反射的な動作が原始反射です。原始反射は一般的に特定の時期から始まり、赤ちゃんの成長に伴って消失していきます。そんな原始反射にはたくさんの種類があるのですが、今回はよく知られている反射の種類や消失時期など気になる点についてまとめました。

原始反射とは

原始反射とは新生児などがある刺激に対して反射的に起こす動作のことです。この反射は通常、新生児などの頃特有のものであり、脳や神経中枢が成長するにしたがって自然と消失していきます。この反射は赤ん坊が正常に発達過程を経ているかという指標にもなります。まれにこの反射を大人になって保持しているという場合もあり、全てが病気等に症状であるとは言えませんが、通常、この反射がいつまでも見られない、または消失しないなどの場合、脳や中枢神経の障害の可能性などがあります。

お腹の中でも反射行動をしている赤ちゃん

以前、胎児はお腹の中では原始反射を行わないとされていましたが、新たな研究によってお母さんのお腹の中でもこのような原始反射が見られることが分かりました。お腹の中の赤ちゃんも刺激があると頭を反対に反らしたり、顔をしかめたり、くしゃみをしたり、まばたきをしたりするようです。基本的にこのような原始反射は胎生5~6か月ぐらいから発達し始めるそうです。もうすでにお腹の中の赤ちゃんもちゃんと外界の刺激に対して反応する力を持っているのですね。

新生児の原始反射①哺乳反射・唇追いかけ反射(ルーティング反射)

これらは赤ちゃんがお母さんのミルクを飲むために備わっている反射行動です。それら口に入ってきた液体を飲み込もうとする嚥下反射(えんげはんしゃ)、口に入ってきた乳首や哺乳瓶を吸おうとする、吸綴反射(きゅうてつはんしゃ、きゅうせつはんしゃ)口に物が触れると唇や舌でくわえようとする捕捉反射(ほそくはんしゃ)そしてお母さんの乳首や乳房を探そうと首を回す探索反射(たんさくはんしゃ)などがこの哺乳反射の行動に含まれます。これらの反射はお腹の中にいる時、26週~32週にはすでにあり、生後4~5か月には少しずつ薄れてくるようです。そしていつまでそのような反射が見られるかといえば、一般的には6~7か月頃には消失するということです。

一方、唇追いかけ反射についても赤ちゃんが母乳などを上手に飲むためにある反射です。赤ちゃんの上唇や頬に触れると、それを追いかけるようにして顔や口を動かす動作をします。始まる時期は吸綴反射と同じくらいで、6か月頃には消失すると言われています。

新生児の原始反射②モロー反射

この反射の目的は赤ちゃんがいち早く危険を察知し、避けるために必要なものです。例えば赤ちゃんは急に大きな音がしたり、抱っこされている時に急にベッドに寝かされたりすると、両手と両足を外側に伸ばし、抱きつくような動作をすることがあります。これはモロー反射と呼ばれるものでオーストリアの小児科医、エルンスト・モローによって発見されたため、そう呼ばれています。これは母親から落下しそうな衝撃などがあった時、すぐに近くにあるものにつかまり危険を回避しようとするなどの理由で備わっている反射です。この反射はお腹にいる27週目~38週目までには完成して、4か月目までには完全に消失すると言われています。

新生児の原始反射③把握反射(手、足)

赤ちゃんの手のひらに指をおくとギュッと握ることがありますが、これも立派な原始反射です。これは人間が猿の頃からある原始反射と言われ、母親から落ちないためにある反射だということです。また、足も同じく、足の裏に刺激を与えると指が曲がります。これも手と同様に把握反射の動作になります。手足共にお腹にいる28週~32週にはほぼ完成され、手は生後4~6か月で消失、足の方は9~10か月で見られなくなります。

新生児の原始反射④バビンスキー反射

バビンスキー反射は足の裏をこするなどすると指が一定の方向に曲がったり、広がったりする原始反射のことです。バビンスキー反射においては親指が足の甲側に反れ、他の4本は外側の方に向かって広がるという状態が見られます。この反射は昔の猿であった時代の名残で、木から落下しないために物をつかむ反射だと言われています。この反射も赤ちゃんがお腹にいる頃から始まっている反射で、胎内にいる12~13週頃から始まり、20週頃にはほぼ完成します。この反射が見られなくなるのは1~2歳頃だと言われています。

他にもあるいろいろな原始反射

新生児の原始反射については上記だけでなく、他にもいろいろな種類があります。例えば緊張性頸反射と言われる反射は寝ている赤ちゃんの頭を一方に向けると、それにならって体の方向も動方向に曲がる反射で、他にもパラシュート反射と呼ばれる赤ちゃんが前かがみになって倒れそうになった時、両手を伸ばす反射なども見られます。ちなみにこのパラシュート反射は生後9か月頃に見られ始める反射で、赤ちゃんがもうすぐ歩く準備に入ったことを示すものでもあります。パラシュート反射は大人になっても転んだ時に体を支えるために必要なので、一生を通じて消失しない原始反射でもあります。他にも自立歩行反射、踏み直り反射、ギャラント反射など実に様々な反射行動があります。どれも新生児がまだ原始の時代から厳しい環境の中で生き残ろうと必死に身に付けた名残なのですね。

いかがでしたか?赤ちゃんの原始反射にはたくさんの原始反射がありましたね。か弱い赤ちゃんはまだ生きてく力が弱い存在ではありますが、けなげに一生懸命成長しようとしているのですね。また、原始反射は赤ちゃんの発達具合を見る上でも重要なので、注意深く観察してあげましょう。もし赤ちゃんの原始反射の反応が見られない、またはいつまでも消失しないといった場合は、一度お医者さんに診察してもらいましょう。